近年、筋肉づくりの目的だけでなく、美容や健康のためにも注目を集めている「たんぱく質」。
ところが、質と量ともに、たんぱく質の摂り方を間違えている方が多いと言います!
そこで今回は、専門家の先生方による、たんぱく質の最新研究セミナー「たんぱく質の賢い摂り方〜植物性・動物性の同時摂取の可能性〜」を取材レポートいたします。
たんぱく質の正しい摂り方を知って、いつまでも美しく、元気に歩ける体を手に入れましょう♪
<教えていただいたのは!>
●赤坂ファミリークリニック 院長 伊藤明子先生
●神奈川工科大学 応用バイオ科学部栄養生命科学科 非常勤講師 佐々木一先生
●徳島大学 大学院医歯薬学研究部 生体栄養学分野 教授 二川健先生
●キューサイ株式会社 マーケティング統括部 研究開発部 森田愛子さん
ヒトの体に欠かせない“たんぱく質”
ヒトが生きていくうえで必要な主な栄養素として、①たんぱく質 ②脂質 ③炭水化物の三つがあります。
ヒトの体の16%はたんぱく質で構成されており、皮膚、筋肉、骨、内臓、白血球、赤血球、ホルモンは、たんぱく質を原料につくられているのです。そして、体内には少なくとも、1万種類ものたんぱく質が存在すると言われています。
また自然界には、たんぱく質の元となるアミノ酸が約500種類存在しています。そのうち、ヒトのたんぱく質を構成するアミノ酸は以下の20種類です。
<必須アミノ酸:9種類>
バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン、メチオニン
<非必須アミノ酸:11種類>
グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、プロリン、システイン、セリン、グリシン、チロシン、アスパラギン、アルギニン
たんぱく質は体をつくるだけでなく、体内の酵素や抗体、神経伝達物質、栄養素の輸送など、生体機能を維持するためのさまざまな働きを担う、とても重要な栄養素なのです!
現代女性はたんぱく質が足りない!?
ところが、日本人のたんぱく質摂取量は年々減少傾向にあり、なかでも女性のたんぱく質不足が深刻化していると言うのです!
ちなみに、日本人の1日のたんぱく質の「推奨量」は以下の通りです。
年齢 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
推定平均必要量 | 推奨量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | |
18〜29歳 | 50g | 60g | 40g | 50g |
30〜49歳 | 50g | 60g | 40g | 50g |
50〜69歳 | 50g | 60g | 40g | 50g |
70歳以上 | 50g | 60g | 40g | 50g |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015」 |
厚生労働省では栄養素の過不足を回避する目的で、上の表のように「推定平均必要量」と「推奨量」を設定していますが、それぞれの意味は下記の通り。
・推定平均必要量:50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量
・推奨量:97〜98%の人が必要量を満たすとされる1日の摂取量
「推奨量」と聞くと、目標とすべきオススメの量なのかと思いきや、じつは100%満たされている量ではなかったのですね!!
つまり、男性では最低でも60g以上、女性では最低でも50g以上のたんぱく質摂取が必要ということなります。
それでは、たんぱく質が不足すると、一体どのようなリスクがあるのでしょうか?
次に挙げるのが、たんぱく質不足で起こる不調や疾患です。
・筋骨格が弱くなり、筋力が低下
・皮膚や髪の劣化
・認知思考力の低下
・情緒、精神の不安定化
・免疫力の低下
たんぱく質は神経伝達物質の材料となるため、不足すると、怒りっぽくなったり、気分が落ち込んだり、集中力がなくなったり、不眠になったりといった、メンタル面での不調も顕著になります!
また、たんぱく質が不足することで、大腸の善玉菌の活性が落ちることもわかっています。40〜50代になると加齢により自然と善玉菌が減少するため、腸内環境の改善にもたんぱく質は積極的に摂る必要がありそうです!
高齢者こそ大切なたんぱく質!
さらに、たんぱく質の不足がより問題となっているのが高齢者です。
たんぱく質が不足すると、筋肉の質と量が低下し、基礎代謝や身体機能が低下します。そして、あまり歩かなくなることでエネルギー消費量が落ちて食欲が湧かなくなり、ますます低栄養・たんぱく質不足となる、負の循環に陥ってしまうのです。
平成22年、23年の国民健康・栄養調査では、70歳以上の男女のたんぱく質摂取量の平均値は、推奨量を上回ってはいますが、標準偏差が大きいため、推奨量に届かない人がかなりの数存在するのではないかと推測されています。
高齢者は、成人よりさらに多くのたんぱく質を摂取しなければ、筋肉を作ることができません。筋力維持や寝たきり予防のため、高齢者に本当に必要な1日のたんぱく質量は、75〜90gと言われています。
たんぱく質摂取の落とし穴と賢い摂り方
「たんぱく質の重要性はわかったけれど、どうやって摂るのが一番いいの?」
多くの人がたんぱく質摂取で陥りがちなのが、肉などの動物性たんぱく質ばかりを摂取して、脂肪の摂りすぎになってしまうケースです。動物性脂肪の摂りすぎは、肥満や動脈硬化といった生活習慣病のリスクを高める要因となります。
そこで重要なのが、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を組み合わせて摂ることです!
<動物性たんぱく質を多く含む食品>
・肉 ・魚 ・卵 ・乳製品
<植物性たんぱく質を多く含む食品>
・豆腐 ・豆乳 ・納豆 ・きなこ ・ごま
植物性たんぱく質と動物性たんぱく質を組み合わせて摂ることで、動物性脂肪の摂りすぎを防ぐだけでなく、マウス実験によって①長時間たんぱく質の吸収を維持できる、②筋肉の萎縮を抑制することがわかっています。
また、たんぱく質は食べてから3分ほどで分解がはじまるため、食い溜めができません! 1日を通して効率よく体の中で筋たんぱく質を合成するためには、たんぱく質を毎食適量摂取する必要があるのです。
まとめ
先生方がオススメする、たんぱく質の摂り方は下記の通り!
☆動物性と植物性のたんぱく質を1:1の割合で同時に摂る
☆毎食手のひら一枚分(約100g)のたんぱく質を摂取する
☆毎食摂るのが難しい場合は、間食で補う
☆たんぱく質と一緒に野菜もしっかり食べる
☆歳を重ねるごとに多めのたんぱく質が必要だと意識する
☆動物性たんぱく質を摂るときは、脂質の摂りすぎに注意
☆運動後30分〜1時間以内にたんぱく質を摂ると筋肉がつくられやすい
たんぱく質を賢く摂取して、美しく健康的な体を手に入れましょう♪