ドクターコラム

知ろう!乳がんのこと〜みんなの健康塾取材レポート (連載第二回 乳がん検査と予防法について)

川崎幸病院が毎月さまざまなテーマで開催する、健康セミナー「みんなの健康塾」。

今回は、2020年2月6日に第二川崎幸クリニックで行われた講演「あなたの知る勇気があなたを守る力に変わる 知ろう乳がんのこと」についてレポートしたいと思います!

40歳以上の女性が対象となる『乳がん検診』ですが、定期的に受けていますか?

意外と詳しいことは知らない乳がんについて、乳腺外科医の木村芙英先生がご講演くださいました。

乳がんを怖がりすぎることなく、できる対策をしっかり続けて、自分の体を守っていきましょう!

連載第二回目は、乳がんにならないためにできることは?

今日から実践できる乳がん対策についてです。

<教えていただいたのは!>

第二川崎幸クリニック 乳腺外科副部長

木村芙英先生

日本外科学会専門医、日本乳癌学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、マンモグラフィー読影As認定医、日本超音波医学会超音波専門医

気になる、遺伝性乳がんとは?

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝的に乳がんになるリスクが高い「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」であるという理由で、健康な乳房を両方切除したニュースは、当時大変な話題になりました。

確かに、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の方や、乳がんになった家族がいる方は、そうではない人に比べて、乳がんになるリスクは高いことがわかっています。

<乳がんになる確率>

一般の方(日本人) 乳がんの家族歴がある方 遺伝子性乳がん・卵巣がん症候群の方
9%(12人に1人)
18〜36%
41〜90%
1倍
2〜4倍
6〜12倍

ご自身が遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の可能性があるかどうかを簡単にチェックできる項目があります。

ご家族の中に下記に該当する方はいるでしょうか?是非チェックしてみてください。

□40歳未満で乳がんを発症した方

□年齢を問わず卵巣がんになった方

□時期を問わず原発乳がんを2個以上発症した方

□男性で乳がんを発症した方

□ご家族の中で、ご本人含め乳がんを発症された方が3名以上いる方

□トリプルネガティブの乳がんの言われた方

□ご家族の中にBRCAの遺伝子変異が確認された方

一つでも該当する項目があれば、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の可能性は、一般より高いと考えられます。

ではもし、医療機関で遺伝性乳がん・卵巣がん症候群と診断された場合は、一体どうしたら良いのでしょうか?

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の方の対策として、下記に取り組むことが重要と言われています。

  • 18歳から、乳房の自己触診を習慣にする
  • 25歳から、医療機関で半年〜1年に1回の頻度で視触診を受ける
  • 25歳〜29歳、あるいは家族が乳がんを発症した最も早い年齢から、1年に1回の頻度でMRI検査を行う(MRI検査ができなければマンモグラフィ検査を行う)
  • 30歳〜75歳では、1年に1回の頻度でMRI検査+マンモグラフィ検査を行う
  • 75歳以上では個別対応
  • 乳がん治療後は、残っている乳房細胞に対して1年に1回のMRI検査+マンモグラフィ検査を継続する
  • リスク低減手術(乳がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に乳房を切除する手術)について検討し、医療者と話し合う

では実際に、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群で乳がんになる方は、どのくらいいるのでしょう?

下図をご覧ください。

毎年新たに乳がんになる人は約9万人と言われています。

そのうち、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の方は3〜5%、家族が乳がんという家族歴のある方でも10%と、全体数から比べると意外と少ない割合です。

つまり、なりやすい、なりにくいというリスクの差はありますが、全ての女性において乳がんに罹る可能性はゼロではなく、どんな方でも40歳以降の乳がん検診は大切であることがわかります。

乳がんになりやすいのはどんな人?

乳がんになりやすい人となりにくい人の違いは、遺伝や家族歴以外でもあるのでしょうか?

乳がん発症に確実に関係があるとわかっているのは、閉経後の肥満です。

女性ホルモンである「エストロゲン」にさらされる期間が長ければ長いほど、乳がんになるリスクは高くなると言われています。

そして、エストロゲンは、閉経後では脂肪組織から産生されるため、閉経後の肥満は乳がんになりやすいのです。

他にも関連が指摘されているのは下図の通りです。

<日本人における生活習慣要因と乳がんの関連の評価>
逆に、乳がん予防の可能性があるとされるのは、運動、授乳、イソフラボンが含まれる大豆製品の摂取です。

特に運動は、乳がんの再発予防としても最大で41%もリスクを減少させるとされ、ホルモン治療と同程度の予防効果と言われています。

※「METs」とは運動強度の単位で、安静時を1METsとした時、比較して何倍のエネルギー消費であるかを示しています。

※例:歩く=3〜3.5METs、軽いジョギング=6METs

木村先生
木村先生
「乳がんになりやすい人」というのは、言い換えれば、「女性ホルモンが多い女性らしい人」と言えるかもしれません

乳がんを早く見つけるには?

乳がんは何よりも早期発見が重要です。

そのためにも乳がん検診が必要となりますが、大事なポイントとなるのは、自分の年齢や乳腺の濃度によって、適切な検査方法を選ぶことです。

マンモグラフィ検査では腫瘍は白く映りますが、若い方ほど乳腺が密集して全体的に白く見える(高濃度乳房)ため、一般的に発見しづらい傾向にあります。

そういった理由から、自分の乳腺濃度を知ることも重要です。

50歳の方の約40%は高濃度乳房と言われており、40代、50代の方は、マンモグラフィ検査に超音波検査を併用するのがおすすめです。

また、自治体検診でマンモグラフィ検査しか受けられない場合でも、企業検診で別途、超音波検査を受けるなど、組み合わせて受ける手もあります。

マンモグラフィか超音波検査、どちらかしか受けられない場合は、毎年交互に受けても良いでしょう。

そして、医療機関で受けられる乳がん検診の他に大切となるのが、自分で乳房を触診する自己検診です。

鏡の前で、皮膚に異常がないか、以前と比べて左右の大きさに変化はないか、乳首をつまんで赤、黒、茶色の分泌物が出ていないかをチェックします。

次に、横になり、乳房や脇の下を触ってしこりがないかをチェックしましょう。

実は、乳がんの中には大きくなるスピードが早いものも稀にあり、医療機関で検診をきちんと受けていても、見つけた時にはすでに腫瘍が大きくなっているケースがあります。

そのような事態を防ぐためにも、日頃から自己触診で乳房をチェックするのはとても大切なことなのです。

まとめ

今回の記事で、自分でできる乳がん対策は意外とたくさんあったと気づかれた方も多いのではないでしょうか?

定期検診はもちろんのこと、自己触診と運動を習慣にして、積極的に乳がん予防に取り組んでいきましょう!

乳がん検査が受けられるクリニックはコチラ!
◆第二川崎幸クリニック
https://saiwaicl-2.jp/departments/breastcare.php

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