健康

みんなの健康塾取材レポ☆子宮頸がんについて

川崎幸病院が毎月さまざまなテーマで開催する健康セミナー「みんなの健康塾」。
今回は、2019/7/17に行われた「みんなに知って欲しい、がんの原因〜HPVってなんだろう〜」についてレポートしたいと思います!
妊娠子育て中のママ世代に発症しやすい『子宮頸がん』について、産婦人科医の永井美江先生がご講演くださいました。がんのなかでも数少ない「予防できるがん」として知られる、子宮頸がん。ぜひ正しい知識を持って、がんを予防していきましょう!

<教えていただいたのは!>
永井美江先生 川崎幸クリニック 婦人科検診担当
永井美江先生
川崎幸クリニック 婦人科検診担当
女性医療クリニックLUNA横浜元町 婦人科

子宮頸がんってどんな病気?

子宮頸がんの罹患年齢と出産年齢
子宮頸がんとは、女性の子宮の入り口である「子宮頸部」にできるがんです。
他のがんと違って、20〜30代の若い世代に発症するがんとして知られ、毎年約1万人の女性が発症し、約3000人の方が亡くなっている怖い病気です。
上のグラフが示す通り、子宮頸がんの発症年齢と出産年齢はほぼ重なっているため、治療して命が助かったとしても、手術で子宮を摘出したために妊娠・出産できなくなってしまうケースもあります。
子宮頸がんの進行とHPVより
子宮頸がんの原因は、性交経験のある方の半数以上が生涯に一度は感染すると言われる、「HPV(ヒトパピローマウイルス)」というごくありふれたウイルスです。

ただし、感染しても体の免疫作用によって約80%は自然に消え、子宮頸がんに進行することはありません。しかし、ハイリスク型と呼ばれるウイルスが感染した場合に、長く感染が続くことで子宮頸がんに進行します。
タバコは免疫力を低下させるため、喫煙習慣のある人はHPVが自然淘汰されにくいと、永井先生は指摘します。

子宮頸がんでは、HPVが感染してから、10年ほどかけて正常な細胞が徐々にがん細胞に変化していきます。
まず、子宮頸部の上皮組織がHPVに長く感染しつづけると、「異形成」というがんになる前の状態に変化します。初期の異形成の80%は自然に消えていきますが、消えずに進行すると「上皮内がん」という子宮頸がんになり、さらに進行すると「浸潤がん」となって直腸や膀胱にもがんが広がり、最終的には脳などにも遠隔転移していきます。

つまり、がんになる前の「異形成」の段階で発見・治療することが、頸がん予防にとって大変重要です。

「HPV」は種類がたくさんある!

ヒトパピローマウイルス
子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)には、180種類以上もの型が存在します。
その中でも、子宮頸がんになる型は一部で、それをハイリスク型と呼んでいます。

【ハイリスク型】
16型 18型 31型 45型 52型 58型 33型 51型 35型 39型 68型 56型 59型 66型

これらの型が、子宮頸部に持続感染すると、子宮頸がんになるといわれています。

HPVは、子宮頸がんの原因になるほか、じつは皮膚にできるイボの原因ウイルスでもあります。
そして、がんになるハイリスク型以外にも注意が必要なのが、6型と11型です。これは、陰部にできるイボ「尖圭コンジローマ」の原因となる型です。

<HPVの種類>

ローリスク型 ハイリスク型
6、11型 2、4型など 3、10型など 16、18、31、52、58型など
尖圭コンジローマ 尋常性疣贅 青年性扁平疣贅 子宮頸がん

喉頭乳頭腫
尖圭コンジローマの原因になる6型と11型のHPVは、子宮頸がんの原因にはなりません。しかし、もしこの型のHPVに感染したまま自然分娩で出産すると、赤ちゃんが産道を通るときに感染して、「喉頭乳頭腫(こうとうにゅうとうしゅ)」という喉の奥に良性の腫瘍が繰り返しできる難治性の病気にかかってしまう可能性があります。
再発を繰り返すため、赤ちゃんは生まれてから一生涯のうちに、40回以上もの手術をすることもある大変難しい病気です。

子宮頸がんを予防するには?

子宮頸がん検査
子宮頸がんを予防するために最も重要なのが、子宮頸がん検診です。
20歳以上で性交経験のある女性は必ず検診を受けてください。定期的に検診を受けることで、がんになる前に異形成の段階で発見することができ、早期の治療が可能になります。
子宮頸がんは、HPVに感染してから発症まで10年かかるため、最低でも3年に1回、できれば2年に1回は検査を受けると良いでしょう。

子宮頸がん検診では、子宮頸部の細胞をブラシで擦り取って、がんになりそうな細胞がないかを観察する方法(細胞診)が一般的です。

さらに、子宮頸がんの原因となるハイリスクのHPVに感染していないかを確かめる「HPV検査」という検査もあり、30歳以上の女性は検診で併用するのもおすすめです。
HPV検査を併用することで、従来の細胞診のみの検査よりも、異形成や子宮頸がんをほぼ見逃しなく検出できると言われています。
また、初めての性交渉前に「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)」を3回接種することで、子宮頸がん予防に有効です。
公費(無料)でワクチンが接種できるのは、小学校6年生〜高校1年生に相当する年齢の女の子たちです。HPVワクチンは9歳から接種可能ですが、もっとも推奨されているのは11〜14歳の女の子となっています。
日本ではなかなかHPVワクチンの普及が進んでいませんが、世界ではすでに当たり前のように打たれているワクチンです。

男子にも子宮頸がんワクチン推奨
2011年にアメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、HPVワクチンを女子に加え、11〜12歳男子にも定期的に接種すべき、との勧告を出しています。これは、男性においても、HPVワクチンが尖圭コンジローマや中咽頭がんなどの発症を抑える効果が期待でき、また間接的に女性を保護できるとの理由からです。
すでにオーストラリアでは、2013年より公費で中学生男子にもHPVワクチン接種が実施されています。

まとめ

若い世代の命を奪う子宮頸がんは、予防できるがんでもあります!忙しいからと後回しにせず、定期的な子宮頸がん検診で自分の体をしっかり守っていくことが大切です。お住いの自治体から無料クーポンや助成券などが発行される場合がありますので、積極的に利用してぜひ検査を受けてください!

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◆川崎幸クリニック
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