『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』
この衝撃的なタイトルを初めてみたとき、「本当かよ!」と大きく(心の中で)ツッコミました。
そのうえ、手作りでなく「買う離乳食」の方が“元気で頭のよい子”になる!?
自らも2人の子どもをもつママで、日々、子どもたちを診察する小児科医の工藤紀子先生が、その理由や利点を4コママンガなども織り交ぜながら、わかりやすく教えてくれます。
手作り離乳食は大変なことばかり
この本の著書である小児科医の工藤先生の前で「心が折れそうです」「長い間眠れていないんです」と、子どもの付き添いで来たママが泣き出すことも少なくないそうです。その理由の1つに、「離乳食は手作りするべき」というプレッシャーの大きさもあると感じたとか。
そのプレッシャーの正体については「離乳食を作らない→子どもが食べられない→子どもが生きていけない→母親失格(ママであることをやめること)」と分析します。
一方で、工藤先生は自身の経験も踏まえて、「離乳食は作らない宣言」をするのです。
「買う離乳食」はいいことばかり
工藤先生も日本で育児をした長女はガッツリ「離乳食」を手づくりしていたそうです。ところが旦那さんの仕事の都合で、長男の育児はアメリカですることに。そのアメリカで「離乳食への常識」が大きく覆されたといいます。
アメリカはもちろん、先進諸国では離乳食は手作りなどせず、子どもには「市販の離乳食」を与えているのです。
そんなアメリカでの離乳食経験から、見えてきた日本の「手作り離乳食の問題点」。
たとえば「調理に手間と時間がかかり、衛生面の管理が難しい」「外出時の持ち運びが大変」など、自らの日本での育児体験をもとに6つの問題点を挙げています。それはいずれも“離乳食あるある”ばかり。
さらに6つの問題点に「『買う離乳食』ならここが解決」として、その理由をひとつひとつ明快に語っていきます。そこにはママとしてはもちろん、小児科医としての目線も多く含まれているので、非常に説得力があるのです。
「離乳食」で積極的に取るべき栄養素
「鉄を制するもの、育児を制する」という工藤流の格言を掲げるほど、成長と発達のカギとなる栄養素は「鉄」なのだそうです。
ところが鉄を多く含む食材を、ほかの栄養素とともにバランス良く手作りの離乳食で摂取することは至難の業。ただし「買う離乳食」ならば、それが簡単に解決できます。
鉄のほかにも、健やかな成長に欠かせない離乳食から取り入れるべき栄養素があります。それをママたちが簡単に覚えられるように、言葉遊び感覚で暗記するコツを伝授しています。そして、それらの栄養素についても「買う離乳食」ならばバランスよく、手軽に取り入れることができるというのです。
オススメの「買う離乳食」
実践に向けて「どういった商品を購入すればいいのか?」という疑問にも、工藤先生は実際に販売されている商品名やパッケージ写真なども掲載して答えてくれています。
また「買う離乳食」の進め方を3つのステップで紹介し、「いつ、どんな商品を、どのぐらい与えればいいのか」などを、わかりやすいイラストや写真を用いて解説しています。
最後の章は「買う離乳食」を上手に使いこなすための「Q&A」というかたちで構成されていて、より具体的なアドバイスと知識を得ることができます。
さいごに
工藤先生は自身の経験も含め、育児に対するプレッシャーで心の余裕と笑顔を失ったママたちに危機感を抱いています。
それは心の余裕がないと、育児を楽しむことができなくなってしまうからです。
そこでママたちに心の余裕と笑顔を取り戻す手段のひとつとして、手作り離乳食のプレッシャーや煩わしさから解放される「買う離乳食」を利用することを推奨します。
この本を読めば、「買う離乳食」の利用は、けっして手抜きや愛情不足ではないことが、よくわかります。
工藤先生は何よりも「離乳食」の時間が、笑顔溢れる親子の楽しい時間になることを願ってやまないのです。
『小児科医のママが教える 離乳食は作らなくてもいいんです。』(工藤紀子著/時事通信社)