ドクターコラム

知ろう!乳がんのこと〜みんなの健康塾取材レポート(連載第一回 乳がん治療について)

川崎幸病院が毎月さまざまなテーマで開催する、健康セミナー「みんなの健康塾」。

今回は、2020年2/6に第二川崎幸クリニックで行われた講演「あなたの知る勇気があなたを守る力に変わる 知ろう乳がんのこと」についてレポートしたいと思います!

40歳以上の女性が対象となる『乳がん検診』ですが、定期的に受けていますか?

意外と詳しいことは知らない乳がんについて、乳腺外科医の木村芙英先生がご講演くださいました。

乳がんを怖がりすぎることなく、できる対策をしっかり続けて、自分の体を守っていきましょう!

連載第一回目は、もし乳がんになってしまったら?知っておきたい乳がん治療についてです。

教えていただいたのは!

第二川崎幸クリニック 乳腺外科副部長

木村芙英先生

 

日本外科学会専門医、日本乳癌学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、マンモグラフィー読影As認定医、日本超音波医学会超音波専門医

乳がんってどんな病気?

乳がんとは、母乳の通り道である「乳管」にできるがんです。

乳がんをはじめとしたがんは、進行度や状態に合わせて、最適な治療を選択していきます。

1.非浸潤がん…乳管だけにがん細胞がとどまっている状態。局所的な手術で取ることが可能

2.浸潤がん…乳管の周りの間質という組織にがん細胞が広がっている状態。手術と薬の治療が必要

3.転移性乳がん…肺や肝臓、骨、脳など他の臓器(遠隔臓器)にまでがん細胞が転移している状態。薬での治療が中心

※再発…初期治療終了後、数年後に再び乳がんが現れる状態

乳がんの治療とは?

乳がん治療は、一般的に下図のような流れで進められます。

治療開始から10年間再発がなければ、乳がん治療はひとまず卒業です!

乳がん治療には、できたしこりを取って治すための「局所治療」と、再発予防や転移後に病状の進行を抑えるために行う「全身治療」の2つがあります。

手術で乳房を全切除する場合、入院期間は10日ほど。

部分切除の場合は、入院期間は4日ほどで、放射線療法と組み合わせるのが一般的です。

手術でがんを切除するだけでなく、ホルモン療法や化学療法を組み合わせることで、目に見えない小さな転移がんを叩いて、再発率を減らすことができます。

そのため、ステージ1以上の乳がんには、手術だけでなく薬物療法も重要となります。

<術前術後の薬物療法の種類>

治療名 方法 副作用 治療期間
ホルモン療法 1日1回の内服や注射 軽い(更年期症状、関節痛、骨粗しょう症など) 5年〜10年
化学療法(抗がん剤) 1〜3週間に1回の点滴 強い(免疫力の低下、食欲低下、脱毛など) 3〜6ヵ月
分子標的治療 点滴 軽い(発熱、寒気、だるさなど) 約1年

乳がん治療の不安に寄り添う「乳がん看護認定看護師」とは?

乳がんの治療は、先の見通しが見えないと漠然とした不安ばかりが大きくなり、治療に前向きに取り組めなくなることも。

そんな患者さんを精神面でサポートしてくれるのが、看護師さんです。

乳がん看護認定看護師、リンパ浮腫セラピスト

 

國澤さん

 

 

國澤さんからのメッセージ

「がん告知を受けた患者さんの精神面のケアも、私たち看護師の大切な仕事です。

患者さんは診察室でドクターから治療説明を受けますが、後からいろいろな質問や不安が出てくることも。

そんな時は改めて別室で、看護師が患者さんの情緒面に配慮しながら、病状理解を確認し、必要に応じて治療のご説明を補足させていただきます。

中には、突然の乳がん告知に、涙すら出ない方もいらっしゃいますが、別室でお話しするうちに涙を流されることも。

感情のままに泣けるのは、ご自身の心と体に向き合える第一歩のようにも思います。

治療以外にも、かかるお金や、家族や職場への伝え方などのご相談に乗ったり、不安な気持ちを打ち明けてもらったりしながら、患者さんができるだけ前向きに治療へ取り組めるようお手伝いをさせていただいています。

看護師さんは、体のケアはもちろん、精神的な心のケアもしっかり向き合ってくれる頼れる存在です!

薬物療法の選択に役立つがんの遺伝子検査

化学療法(抗がん剤)は副作用が大きいため、基本的に行うメリットの少ない方に実施することはありません。

そこで判断の参考になるのが、多遺伝子発現検査で代表的なもので、「オンコタイプDX」という、がん細胞の特性を遺伝子レベルで解析する検査です。

(2020年3月現在は保険適用外。全額負担のため費用は45万円程。施設により料金は異なる)

手術で摘出したがん組織を使用して、再発の可能性と抗がん剤の有効性を判定することが可能です。

また、標準的治療に効果が得られなくなった固形がんに対して保険適用されている、遺伝子パネル検査(NCC Onco-panel や Foundation one) もあります。

どの薬剤が効果的かを調べることができ、保険適用で自己負担額は5万円〜15万円と費用も抑えられています。

失った乳房を再建するには?

乳房を全切除した場合は、自身のお腹や背中の脂肪や筋肉を用いて胸の膨らみを取り戻す再建手術や、人工乳房を挿入することによる再建手術を行っています。

乳房の再建手術は2〜3週間入院して手術を行い、場合によってはさらに数回の手術を経て乳房を作っていきます。

<乳房再建の方法別メリット・デメリット>

乳房再建の方法 メリット デメリット
自分の脂肪や筋肉を使う 温かく柔らかい胸

お腹や背中の脂肪が取れる

脂肪や筋肉の採取で、もう1箇所傷がつく

手術時間が長い

人口乳房を挿入する 傷が少なくて済む ひんやりと冷たい胸

数年で硬くなるので入れ替えが必要

その他には脂肪注入で乳房を再建する方法もありますが、現段階では保険適応外です。

また、CAL(Cell-Assisted Liportransfer)という、自身の脂肪に幹細胞を加えて胸に注入する「再生医療」による再建手法が確立され、脂肪の生着率が高く、部分切除の方の再建も行えるという特徴があります。

まとめ

乳がん治療は日々進歩していますが、治療の効果を得るためには、何よりも早期発見・早期治療が大切です。

第二回では、乳がん検診と乳がんにならないための予防法についてレポートいたします!

乳がん検査が受けられるクリニックはコチラ!
第二川崎幸クリニック

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