健康

食物アレルギーってなんだろう? 〜増えている食物アレルギーとどう向き合っていくか〜

食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されています。簡単に言うと、「本来は体に害を与えない食べ物を異物と勘違いし、免疫反応が過敏に働いてしまう現象」です。
近年、食物アレルギーをもつ子どもの数が増えています。
ひどい場合には命にかかわる食物アレルギー。今、食物アレルギーをもってない人が将来食物アレルギーになってしまうことだってあるのです。決して人ごとではない食物アレルギーについて一緒に考えてみませんか?

食物アレルギーは子どもに多く見られるのが特徴で、原因食物としては鶏卵・牛乳・小麦が多いと言われています。食物アレルギーをもつ子どもの割合は、診断基準や調査方法によって多少異なりますが、医師から診断を受けたことのある乳幼児は約5〜10%、小学生から高校生で約2.3%と報告されています。
学童期までに治る子どもが大多数で、乳児期に発症した食物アレルギーは自然治癒が期待できます。

筆者の体験談

はじめまして、筆者の佐藤香理です。
私は11歳、7歳、4歳の息子がいて、そのうち7歳の次男が重度の食物アレルギーです。患者の立場から私や息子の体験や経験をお伝えすることにより、微力ながら食物アレルギー児やその保護者の心の支えとなり、少しでも多くの方に食物アレルギーについて正しい知識を周知できたらという思いから書かせていたきました。

次男は生後6か月の時、初めて与えた粉ミルクを嘔吐し顔が腫れ上がりました。
1歳の時初めておこなった血液検査で食物アレルギーと診断を受け、クリニックの小児科医師の指示のもとアレルゲンである鶏卵、小麦、乳、エビ、カニ、そば、落花生、ヘーゼルナッツ、れんこん、鮭、いくらのすべてを5年間完全除去していました。
5歳で保育園を転園したのがきっかけで、アレルギー専門医を受診し医師から告げられたのは「今まで診てきた患者の中で5本の指に入るくらい、重度だ」ということ。

食物アレルギーは乳幼児に多く鶏卵、牛乳、小麦、大豆のアレルギーは3歳までに5割、小学校就学前までに7〜8割が治ると言われています。次男はその治るタイミングを見事に逃していました。早期診断と治療、正しい情報と知識の習得がいかに重要かを思い知らされました。
同じ思いを他の子ども達にはしてほしくない!!その想いから食物アレルギーについての周知活動をするため、2018年8 月にすぎなみ食物アレルギーの会を立ち上げました。2019年4月に小学生になった次男は命を守るエピペン®(アドレナリン自己注射)、抗アレルギー剤、お弁当と水筒を欠かさず持っていきます。
小学生までに食べられるようになったものは、そば、れんこん、鮭、いくら。
鶏卵、小麦、乳、エビ、カニ、落花生、ヘーゼルナッツは今も完全除去です。
そのアレルゲンが微量でも皮膚に付着すると蕁麻疹が出るほど重度です。
食物アレルギーとは長年のお付き合いになることもあります。少しでも多くの皆さんに理解してもらえたら幸いです。

食物アレルギーは誰にでも起こりうるの?

大人になってから甲殻類が食べられなくなった、果物の一部が食べられなくなったとか聞きませんか?原因食物を食べたあと運動をすることで発症する食物依存性運動誘発アナフィラキシー、花粉症を持った人に多く認められる口腔アレルギー症候群など、今、食物アレルギーでなくても将来、食物アレルギーになってしまうこともあるんです。
食物アレルギーは、症状の特徴や原因となる食べ物から、以下の5つのタイプに分けることができます。

5つのタイプ 症状の特徴 原因となる食べもの 発症年齢 アナフィラキシーの可能性 自然に治る可能性(寛解)
即時型 原因食物を食べてから、2時間以内の症状は出る。皮膚症状が出ることが多い。 年齢によって変わる 新生児期〜成人期 高い 鶏卵、牛乳、小麦、大豆などは寛解しやすい。その他は寛解しにくい。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー 原因食物を食べたあと、4時間以内に運動して、アナフィラキシーを引き起こす。 小麦、えび、かになど 学童期〜成人期 とても高い 寛解しにくい
口腔アレルギー症候群 口のまわりがかぶれてかゆくなる。花粉症の人が交差反応を起こすことで発症する。 くだもの、野菜など 幼児期〜成人期 低い 寛解しにくい
新生児・乳児消化管アレルギー 血便、嘔吐、下痢など消化器に症状が出る。 おもに粉ミルク 新生児期〜乳児期 低い 多くは寛解
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎 顔や頭にかゆみのある湿疹ができ、治りにくい。 卵、乳、小麦、大豆など 乳児期 低い 多くは寛解

食物アレルギーかもって思ったら!

①アレルギー専門医のいる病院を受診しましょう。

アレルギー専門医は、日本アレルギー学会の厳しい審査と試験で認定されます。
認定された専門医は、以下ホームページから検索できます。
https://www.jsaweb.jp/modules/ninteilist_general/

問診時に食べたもの、時間、分量、症状を正確に医師に伝えるために症状をスマホのカメラなどで撮影しておくのもおすすめです。

また、日頃から食物アレルギー日記をつけておくのもおすすめです。
http://www.jaanet.org/pdf_files/SA_syokumotsu-nikki.pdf
公益財団法人日本アレルギー協会

②原因食物を調べる検査

・血液検査(IgE抗体があるか血液をとって調べる)
・皮膚試験(アレルギーが疑われる成分を皮膚につけ反応をみる)
・食物除去試験(疑われる食べ物を食べないと症状はどうなるかをみる)

③食物経口負荷試験

病院の中で、アレルギーがうたがわれる食品を実際に食べ、どんな症状が出るかを調べます。
食物アレルギー研究会などのホームページで食物経口負荷試験実施施設を探すことができます。
https://www.jsaweb.jp/modules/ninteilist_general/

まとめ

食物アレルギーは早期治療が重要です。食物アレルギーは日常生活の一部である食生活に多大な影響を与えます。現在、日本の治療レベルは最先端だと言われており、食物アレルギーの治療の原則である「必要最小限の食物除去」が実施できる国です。多くの皆さんが食物アレルギーについて正しく理解し、食物アレルギーをもつ子どもたちのQOLの向上につながるよう医療と患者のかけはしになれるよう今後も活動していく所存です。

参考文献

・小児アレルギーエデュケーターテキスト 基礎篇
・食物アレルギーハンドブック2018
・よくわかる食物アレルギー対応ガイドブック2014
・食物アレルギーの悩みを解消する!最新治療と正しい知識
・食物アレルギーキャラクター図鑑

<プロフィール>
佐藤 香理
すぎなみ食物アレルギーの会代表。
食物アレルギーライター、環境アレルギーアドバイザー、アレルギー対応食アドバイザー、インターネットアレルギー大学」全課程終了。
東邦音楽短期大学を卒業後、三井住友銀行(旧住友銀行)、経営コンサルティング会社「ジェネックスパートナーズ」にてコンサルタントアシスタント、秘書、人事総務、アドミニストレータ等の経験を積む。長男の出産を期に退職し、リトミック研究センターにてディプロマBを取得しリトミック・ピアノ教室を開く。次男の食物アレルギーをきっかけに2018年8月 「すぎなみ食物アレルギーの会」を立ち上げ、11歳、7歳、4歳の男児の子育てと講師をしながら食物アレルギーの周知活動をしている。

すぎなみ食物アレルギーの会
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