「風邪をひいたみたいだから、病院で抗生剤もらってこよう」
「先生、抗生剤ください」
当たり前のように口にし、耳にしている言葉かもしれませんが、ちょっと待って! それって本当に風邪に効く薬なのでしょうか?
風邪の9割に抗生剤は効果なし
じつは、いわゆる風邪と呼ばれる症状の9割に対し、抗生剤は効果がないというのをご存知でしょうか?
抗生剤が効果を示すのは細菌が原因の場合だけ。
風邪の9割はウイルスが原因といわれているため、【風邪だから即、抗生剤】は意味がなく、身体に負担を掛けるだけの過剰処方といえるのです!
しかし、抗生剤の過剰処方が問題となるのは、それだけではありません!!
抗生剤の過剰使用に警鐘
「今、抗生剤の過剰使用によって抗生剤の効かない細菌が増えてしまい、世界中で問題となっています。」と小児科専門医の佐藤明弘先生は警鐘を鳴らします。
人類が抗生剤を発明したのは、今から約90年前のこと。それ以来、細菌に有効な手段として抗生剤を使用してきました。
しかし、細菌も生物です。生き抜くために、どうにか抗生剤に対抗できる力を身につけ変異してきました。そして1960〜70年代頃、ついに抗生剤の効かない【耐性菌】が出現しました。
その後10年ほどかけて数種類の抗生剤にも耐性をもつ【多剤耐性菌】が登場し、その種類もどんどん増加して、問題はますます深刻化しています。
このまま抗生剤の過剰使用が続けば、細菌感染による死亡数が、推計で2050年にはガンの死亡数を抜いてトップになるともいわれています。
抗生剤と耐性菌について佐藤先生にインタビュー
前述の南町田こどもクリニック院長 佐藤明弘先生に耐性菌について詳しくお聞きしました。
佐藤先生「ヒトの体には必ず常在菌と呼ばれる細菌がいくつか住んでいます。常在菌は体が弱った時に悪さをするのでその際には抗生剤を使って治療します。
しかし、抗生剤が効かない菌が増えています。特にありとあらゆる抗生剤が効かない多剤耐性菌が国内外問わず増えつつあり、この菌が重症な感染症を引き起こすと治療ができません。
以前でしたら一つ効かなくなれば新たな抗生剤ができてきたのですが、ここ何年も新しい抗生剤はできていません。私たちはいまある抗生剤で多剤耐性菌と戦わないといけないのです。」
やえ編集スタッフ「そんなに恐ろしい事態となっているのですね!! 病院では、耐性菌に対してどのような対策を取られているのでしょうか?」
佐藤先生「大きな病院では、感染制御を専門にした対策委員会を設置し、抗生剤が適正に使用されるよう厳しく指導・管理しています。それくらい抗生剤の取扱いには、本来注意が必要なものなのです。【念のため】の処方が耐性菌を生んでいるといっても過言ではありません。」
やえ編集スタッフ「患者側も抗生剤に対する意識を改めて、安易に抗生剤を欲しがる風潮をなくしていかなくてはいけませんね。」
佐藤先生「その通りです! 風邪をひいて黄色い鼻水がでたから抗生剤、というのは大変な間違いなのですよ。
細菌が白血球に分解される際に黄色い鼻水がでることはありますが、それはウイルスが分解された場合でも同じこと。
また、一般的に発熱して2〜3日で抗生剤を使用するのも、同様に正しい治療ではありません。
日常的に健康な方の場合、風邪治療は対症療法で治療します。対症療法で治らず症状が長引き細菌感染が疑われる場合には抗生剤を使用することが適切な治療と言えるでしょう。
そのためには医者の努力だけでなく患者さんも「念のため」と抗生剤を欲しがらず治療に協力いただくことが必要なのです。」
やえ編集スタッフ「子ども達が生きる将来に細菌に有効な抗生剤を残すためにも、私たちが身近なところから薬に対する考え方を変えていく必要がありますね! 先生、今日はありがとうございました!」
抗生剤が効く病気と効かない病気
病気 | 一般的な原因 | 抗菌薬の必要性 | |
---|---|---|---|
ウイルス | 細菌 | ||
かぜ/鼻水 | ○ | 不要 | |
気管支炎/せき・たん | ○ | 不要 | |
百日咳 | ○ | 必要 | |
インフルエンザ | ○ | 不要 | |
溶連菌咽頭炎 | ○ | 必要 | |
咽頭炎(溶連菌以外) | ○ | 不要 | |
滲出性中耳炎 | ○ | 不要 | |
尿路感染症 | ○ | 必要 | |
副鼻腔炎 | ○ | 必要 |
参考:https://antibioticawarenessjp.jimdo.com/
▼佐藤先生は、このようなポスターをクリニックに掲示して、患者さんに抗生剤の適正使用を呼びかけています!
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