ドクターコラム

母乳育児は栄養満点だから大丈夫……ではありません! 小児科医が指摘する、ビタミンD不足の怖さ

時田章史先生近年、O脚といった骨の変形の症状が出る“くる病”の子どもたちが急増しています。この病気の主な原因はビタミンD不足。特に母乳育児の赤ちゃんは注意が必要と言われているのです! 今回は、くる病に詳しいクリニックばんびぃに 院長の時田章史先生に、その予防法についてお聞きしました!

Q:“くる病”とはどのような病気でしょうか?

“くる病”とは、カルシウム、リン、ビタミンDのいずれかが欠乏することによって発症する病気で、骨端線が閉鎖する前の子どもに起きる骨の病気です。必要な栄養素が十分に得られないことで、O脚などの骨格異常や筋緊張の低下といった症状が現れます。また最近では、免疫力の低下、精神神経症状と関係することも報告されています。

現代では、特にビタミンDが不足することで発症する“ビタミンD欠乏性くる病”が注目されています。ビタミンDは体内で生成できるビタミンです。また日光を浴びることで皮膚から合成することもできますが、過剰な紫外線対策やアレルギーを心配した食事制限などの影響で、欠乏状態に陥っている乳児が多いと言われています。日本国内で行われたある調査では、母乳栄養が中心の0~6カ月齢児では、75%以上がビタミンD不足の状態であったと報告されています。

Q:特にどのようなお子さんは注意が必要ですか?

ビタミンDが不足する原因としては、以下の4点があげられます。
  1. 過剰な紫外線対策で十分に日光に当たっていない
  2. 大気汚染の影響で外遊びが少ない
  3. 住んでいる地域の紫外線量が少ない(北陸、東北、北海道など)
  4. アレルギー対策などで食事制限をしている


昔の子供たちは食事や十分日に当たることで必要なビタミンDは体内合成できるので、不足することはないということが一般的でした。しかし、社会環境の変化などにより、若い世代と母親世代のビタミンD不足が指摘されるようになってきました。たとえば、アレルギー治療のために食事制限をしていたり、日光浴が十分でなかったり、母乳栄養中心の乳児が離乳食への移行が順調でなかったりすると、ビタミンDが不足しがちになります。

特に、母乳で育つ赤ちゃんたちは、実に75%以上がビタミンD不足の状態なんです。対して、人工栄養で育つ赤ちゃんでビタミンDが不足しているのは20%未満。母乳育児自体は推奨したいところですが、ビタミンDの摂取量に関しては母乳も万能ではないことを知っておく必要がありますね。

Q:特にどのようなお子さんは注意が必要ですか?

母乳は赤ちゃんにとって大切な素晴らしい栄養源です。しかし、厚生労働省の基準に照らしても、母乳だけでは1日の目安量には届きません。ビタミンDに関していうと、人工乳と比べた母乳のビタミンD濃度は6~30%と、半分にも及ばないのです。

ビタミンD不足を補うためには、日光浴によって皮膚での合成を助けてあげることと、鮭やシイタケなどのビタミンDの豊富な食材を利用することはもちろん、サプリなどでの経口摂取をすることも必要な時代になっています。外出が少ないご家庭の場合、十分にビタミンDを合成できないこともあるので、母乳育児のママには新生児から使用できる子ども用ビタミンDサプリメントの利用がオススメですよ。液体タイプのサプリメントなので、使い方はとても簡単。1日に1回、サプリを1~2滴をお母さんの指先につけて吸わせてあげたり、乳首に垂らしてから授乳してあげてくださいね。

市販のベビーDと医療機関で販売されているベビーD200の2種類があります。(森下仁丹)1日投与量はベビーD200なら1~2滴、ベビーDなら2~5滴となります。

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富澤比奈(取材・文 ライター)

富澤比奈(取材・文 ライター)
1978年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、語学系出版社で主に社会人向け英語教材の制作に携わるが、20代半ばで独立。以降、語学・教育系の執筆・教材制作だけでなく、「日経エンタテインメント!」「an・an」「週刊テレビガイド」などエンターテインメント系雑誌・ウェブサイトおよび、「リトル・ママ」など子育て系メディアの編集・執筆や、オウンドメディアの制作協力・執筆など、幅広く活動している。