健康

新型コロナワクチンの陰で、大事な子どもの予防接種を忘れてはいませんか?〜ワクチンパレード2021取材レポ〜

新型コロナウイルスの流行と、その予防ワクチンで持ちきりだった2021年。
ただ、予防接種が大切なのは、新型コロナウイルスだけではありませんよね!
このコロナ禍で、本当に必要な病院の受診を控えたり、従来から行われてきた子どもたちの予防接種が滞るといった問題も起きました。

今回は、2021年10月21日に「希望するすべての人にワクチンを!」をテーマにオンライン開催された、ワクチンパレード2021についてご紹介します。

ワクチンパレードで切実に訴えられたメッセージ

(画像提供:ワクチンパレード実行委員会)

今年参加された患者・家族会、医師団体などが発信したメッセージは以下の通りでした。

「予防接種施策は科学的データおよび専門家の活発かつ透明な議論に基づき決定し、おたふくかぜを早急に予防接種法のA類疾病に定め、地域、経済、情報格差なく、すべての子どもたちが、おたふくかぜワクチンを受けられる予防接種法の改正を求めます」
特定非営利活動法人 VPDを知って、子どもを守ろうの会

「留学希望者、寮の入寮者、スポーツの海外遠征者、留学生を迎え入れるホストファミリーなど、侵襲性髄膜炎菌感染のリスクの高い群へのワクチン接種費用助成を求めます。また、2025年大阪・関西国際万博を契機として、今後開催される国際規模でのイベントやスポーツ大会に際し、運営関係者、ボランティア、会場運営に従事する者、海外からのゲストの接客に従事する職種の方へのワクチン無償接種も急がれる課題です」
細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会

「風疹の追加的対策の第5期定期接種の対象期間を3年間に限定することなく、風しんの抗体保有率が目標値90%に到達するまで継続することを求めます」
風疹をなくそうの会『hand in hand』

「WHOは、世界ではマラリア、結核、HIVの感染率、死亡率が減少する一方で、肝炎ウイルスのみが増加していると報告し、2020年までに肝炎ウイルスの新規感染者を30%、死亡者を10%減少する目標を掲げています。B型肝炎ワクチンの定期接種の青年期の対象拡大を求めます」
NPO法人日本小児肝臓研究所

「2012年の生ワクチンから不活化ポリオワクチン切り替えの時に検討を約束されていた、就学時の5回目の追加接種の実現を求めます」
ポリオの会

「新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に麻しんの流行が懸念されている中、海外から麻しんが持ち込まれても感染拡大しないよう、MRワクチン2回接種の徹底にむけた具体的な策を講じることを求めます」
SSPE青空の会 (亜急性硬化性全脳炎・家族の会)

「子宮頸がんは子どもを産み育てる年代の女性が多く罹患し、年間3000人近くが尊い命を落としています。一刻も早いHPVワクチンの積極的勧奨接種の再開とともに、勧奨接種差し控え期間の定期接種対象者への経過措置及び子宮頸がんに関する知識と理解のためのがん教育と性教育の普及を求めます」
NPO法人くまがやピンクリボンの会

「治療法に関わらず、小児がん治療により抗体が消失した子どもたちへのワクチンの再接種助成事業の創設を求めます」
一般社団法人チャーミングケア

「HPVワクチン for Me としては「HPV ワクチン(子宮頸がん等予防)を打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください」
HPV ワクチン for Me

「HPVワクチンは定期接種であり、積極的接種勧奨の再開を早急にすることを求めます」

公益社団法人日本産婦人科医会

「国の責任でワクチンの確保・健康被害の補償、治療・支援体制の確保を。HPVワクチンに関する平成25年勧告を廃止し、日本版ACIPの早期創設を求めます」
全国保険医団体連合会

「地域やお金の格差なく無料で接種できる環境を求めます。ワクチンで防げる病気はワクチンで防いでいこう!」
千葉県保険医協会

8団体中3団体がHPVワクチンの積極的接種の推奨再開について触れています。HPVワクチンに関するトークショウの取材記事は、コチラからご覧いただけます。

各団体の詳しいメッセージは、アーカイブ動画をご視聴いただくのが一番かと思いますが、この記事では特に、二人の子どもがいる私が、母親目線で驚いたことや気になったことを4つピックアップしたいと思います!

やえ編集スタッフ
やえ編集スタッフ
ワクチンや感染症について、知らないことばかりでした!

①HibワクチンでHib細菌性髄膜炎は激減! ワクチンの効果ってやっぱり凄い!!

ワクチンは「病気にならない・重症化を防ぐ」ことが目的なので、病気を治す薬のように「よく効いてる!」と効果を実感することって、なかなかできないものですよね。
従来の感染症は、新型コロナウイルスのように、日々TVなどで感染者数の増減が報道されることもありませんし。
だから、「かかりつけのドクターにワクチンを薦められて打ったけど、実際うちの子のメリットになってるの?」なんて疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
でも! ここ最近の日本でも、ワクチンのおかげで撲滅できた病気は確かに存在するんです!

それが、Hib細菌性髄膜炎です。細菌性髄膜炎は、かかってしまえば最悪命を落としたり、脳に後遺症が残ってしまうような重い病気です。
Hibワクチンが導入される以前は、日本で年間約600人の子どもたちがHib細菌性髄膜炎を発症していました。ところが、2013年にHibワクチンが定期接種化されると、みるみるうちにHib感染症は激減!!翌年2014年のHib細菌性髄膜炎の発症例は、なんと0例と報告されています。
このエピソードから、ワクチンってやっぱり打ったほうがいいものなんだ、と改めて思いました。
※Hib:「インフルエンザ菌b型」という病原性の細菌

②麻しんは治ってからも怖い。MRワクチン2回接種以外の選択肢はなし!

「でも薬で治る病気だったら、かかるかもわからないし、わざわざワクチンを打つ必要ってなくない?」と思われている方に知ってほしいのが、思わぬ後遺症や障害です!!

例えば風しんは、たいてい軽い症状で済みますが、妊婦さんが感染するとお腹の子に重い障害を引き起こす場合があります。
妊娠してからでは生ワクチンである風しんの予防接種は受けられないため、もし感染してしまったら、「障害の可能性があるけれども出産する」か、はたまた「中絶する」かの非常に厳しい選択を迫られることになります。

また、麻しんに1歳前後に感染した子が、数年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる難病を発症するケースもあります。発症すると、今まで元気に生活していた子が知的障害や運動障害を引き起こし、あっという間に寝たきりにまで悪化してしまう、大変ショッキングな病気です。

(画像提供:ワクチンパレード実行委員会)

▲SSPE青空の会の田伏さんの娘さんは、生後11カ月で麻しんに感染しました。そのときは大事に至らず無事回復し、高校まで元気に学校に通っていましたが、高校2年生でSSPEを発症。わずか1カ月後には歩けなくなり、7カ月後には言葉のやりとりもできなくなりました。

しかし、これらの深刻な病気は、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を2回接種するという、とても簡単な方法で予防することができます。

そしてポイントは、「麻しんも風しんも、社会全体が集団免疫を獲得することが大切」ということ。
過去の予防接種政策で、1962年(昭和37年)4月2日〜1979年(昭和54年)4月1日生まれの男性は、風しんの公的予防接種を受ける機会がなかったため、抗体を持っていない人が多くいます。
現在、各自治体では、その方達に無料で抗体検査と予防接種が受けられるクーポンを配布しています。こちらは今のところ2022年3月までの施策のため、ぜひ該当年齢の方は、今すぐ抗体検査を受けて、抗体がない方は予防接種をして頂けたらと思います!

(画像提供:ワクチンパレード実行委員会)

▲風疹をなくそうの会『hand in hand』の可児さん。風しん抗体空白地帯の40〜50代男性を対象とした、無料で抗体検査とMRワクチン接種が受けられる施策が2022年3月で終了となることから、2021年9月に厚生労働副大臣に政策の期限延長を要請するとともに、対象年齢の男性に対してクーポンの早めの利用を呼びかけました。

またコロナ禍で、子どもの就学前の2回目のMRワクチン接種を後回しにしている方も散見します。(川崎市におけるMRワクチン2期の接種本数は、2019年3月と比べて2020年3月では52.8%まで減少していた※)

※引用文献:国立感染症研究所ホームページ「COVID-19流行下における国内小児の麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種状況(IASR Vol. 41 p164-165: 2020年9月号)」https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2528-related-articles/related-articles-487/9874-487r08.html

MRワクチンは、2回の接種でようやく予防に必要な抗体量を得ることができます。小学校入学前に、ぜひ忘れずに2回目の接種を行うようにしてください!!

③ポリオワクチンは抗体価を持続させるため、海外では5回接種が当たり前!

ポリオウイルスに感染することで、軽い風邪のような症状が出るポリオですが、なかには約1000人〜2000人に1人の割合で手足の麻痺が後遺症として生じることがあります。

そのポリオを予防する不活化ワクチンは、現在、四種混合ワクチンとして打たれています。
四種混合ワクチンは、0歳児に3回、1歳になってから1回の計4回が定期接種になっています。
しかし、不活化ポリオワクチンは接種から時間が経つと抗体価が低下し、感染予防効果が弱くなることがわかっています。
より長い間ポリオ感染を予防するためには追加接種が必要で、海外ではさらに5回目の接種を4歳以降で行うのが一般的です。
日本ではこの5回目の追加接種は任意となるため、自費で打つしかありません。
ワクチンパレード2021では、5回目接種も公費負担(実質無料)で打てるよう求める声が上がっていました。

④おたふくかぜワクチンの定期接種化を!

子どもがかかる感染症としてよく知られている、水痘(みずぼうそう)とおたふくかぜ。
水痘ワクチンはすでに定期接種化されていますが、おたふくかぜワクチンは未だ任意接種となっています。
おたふくかぜは、年間約700人が重症化して重度の難聴に、また年間30人が脳炎を起こして最悪亡くなるという、私たちが想像するよりも、ずっとずっと怖い病気なんです! 難聴は、その子の人生を変えてしまう一生続く障害です。
ポリオ同様、おたふくかぜワクチンの早い定期接種化が望まれています。

(画像提供:ワクチンパレード実行委員会)

▲「おたふくかぜによる難聴は後天性のため、障害者手帳の取得が難しい」と語る、難聴当事者の人工聴覚情報学会・眞野さん。難聴というリスクを避けるためにも、おたふくかぜワクチンの接種と定期化を訴えました。

ここまでで、思いのほか就学前の追加接種が必要なことに気づかれた方も多いのではないでしょうか?

<就学前の追加接種>

・MRワクチン
・不活化ポリオワクチン
・三種混合ワクチン(百日せきの感染予防の目的で接種推奨)
・おたふくかぜワクチン

子どもが赤ちゃんのときは、予防接種スケジュールを常に意識して生活していますが、子どもが少し大きくなって予防接種の回数が減ってくると、つい忘れがちになりますよね?
そこでおすすめなのが、「NPO法人 VPDを知って子どもを守ろうの会」の予防接種スケジュールです。

私はこちらをプリントアウトして、手帳に入れて持ち歩いていました!
いつ何を打てば良いかが一目でわかるよう作られていて、接種済みのワクチンはチェックを入れておけるので、とっても便利でした!
VPDの会では、無料で使えるアプリ「予防接種スケジューラー」も配布しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

そして、この追加接種が必要なワクチン、実はMRワクチン以外はすべて任意接種なんですよね。
この10年ほどで日本のワクチン事情もだいぶ前進したように感じましたが、まだまだ世界標準に届いていないということが、今回のワクチンパレード2021のメッセージから学ぶことができました。

やえ編集スタッフ
やえ編集スタッフ
いくら制度が整っていても、ワクチンを打たなければ予防はできないということも忘れちゃいけないですよね!
ぜひこの機会に、お子さんだけでなく、パパママ自身の接種状況についても、振り返ってみてください!
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やえ編集スタッフ
ゲンキのモトの編集・ライティング担当。13才と9才の男の子がいます! インスタグラムでも、日々のお弁当や大好きなスイーツなどをアップしています♪良かったら見にきてくださいね!(@mainichi_sweets_genkinomoto